PEOPLE アルプスな人たち

移住から始まった第二の人生は「職人」の道。縁で結ばれた蕎麦打ちに心を注ぐ。

三分一湧水館 蕎麦処 三分一 佐藤 健一

01. どんな業務をしているの?やりがいを感じるときは?

 三分一湧水館内の「蕎麦処 三分一」の蕎麦打ちを中心に、厨房業務、ホール業務も行っています。みなさんご存じのように、蕎麦は奥が深いのですが、蕎麦打ちもとても奥が深いのです。天気で蕎麦の仕上がりが違うことはもちろんですが、打ち手のモチベーションによっても左右します。蕎麦を打ち終わり、包丁で切っていくこともリズムに上手に乗れないと均等になりません。心の表れが蕎麦に出ますので、蕎麦を打つときは、心を静め、流れに乗って取り組みます。こうして出来上がった蕎麦をお客様に「おいしい」と言っていただいたときが、やはり一番嬉しく、頑張った甲斐があったとホッとします。
 店では、地元の「三分一そば組合」さんが育てた蕎麦から挽いた蕎麦粉を使用しています。この組合は、農薬と化学肥料を一切使わない栽培にこだわりを持ち、生産者は皆60代~80代までの高齢の方々です。その方たちが品質の向上を常にしてくださっていますので、その努力を私たちはカタチにしていく責任があります。生産者の方々に刺激を受け、私も日々勉強と努力を怠らないようにし、みなさんの期待を裏切らない蕎麦を打つことこそ、やりがいであります。

02. 入社した理由は?

 前職は東京の食品メーカーで販売促進業務を行っていました。毎日忙しく、ゆっくりと休みを取った記憶はありません。
 きっかけは、55歳のときにふらりと訪れた小淵沢が気に入り、妻と一緒に移住を決めたこと。東京の生活とは一変、自然に囲まれた中での生活は、長年苦しめられていた胃潰瘍も半年で治ったほどです。長いこと働き詰めであったので、しばらくはのんびりと過ごそうと思っていたのですが、世の中のために役立つことをしたいなと思い始めた矢先、ご近所の方からこちらを紹介していただきました。
 サラリーマン時代に、忙しい中でも趣味で蕎麦打ちをしていたこともあり、蕎麦打ちという職業に必然性を感じました。加えて、幼い頃からなんとなく職人というものに憧れていたので、職人になれる上に、蕎麦打ち職人と聞いたときには、運命的なものを感じたのも事実です。のんびりしたい気持ちは、蕎麦打ち職人という言葉にかき消されてしまったようです。笑
 移住してきた地で、知り合いの縁で趣味であった蕎麦打ちを仕事にしている…。憧れていた職人の道が現実になった喜びと、まるでサクセスストーリーのような展開…。なにかに導かれてきたような気がしています。

03. 仕事とプライベート、両立できていますか?

 自然の中で生活を楽しみながら、趣味としていた蕎麦打ちを仕事にしていることに、日々幸せを感じています。
サラリーマン時代に比べたら時間を有効に活用できます。そのため、やりたいことがたくさんあって、なにから始めようか迷ってしまいますが、まずは渓流釣りやトレイルランを楽しんでいるところです。今は、忙しかった時間を取り戻すかのように、やりたかったことをしているので、仕事もプライベートも心身も、共に充実しています。
 蕎麦打ちは、日々新たな発見があります。勉強することや知識を得なくてはならないことがたくさんあり、この年齢になっても頑張ろうと思える自分がいます。この感情は、サラリーマン時代にはありませんでしたし、生活そのものが充実している証拠かと思います。ときどき片道4㎞の距離を歩いて通勤するのですが、帰り道は一日を見つめ直しながら歩きます。そんな時間さえも楽しいですね。仕事とプライベートが混在していますが、それが心地いいのです。毎日、朝起きると「ここに移住してよかった」と思い、自然に囲まれた中で、仕事も遊びも充実している喜びを噛みしめています。これからも、この生活を満喫していきたいです。

04. あなたにとってアルプスとは?

 知らない土地への移住で多少なりとも不安がありましたが、希望した土地での生活と自分の趣味を仕事として実現してくれた会社です。
 年齢的に厳しいと思っていたにも関わらず、趣味程度の経験を活かしてくれた会社です。そんな小さな部分も見逃さず、前向きに捉えてくれますので、誰にでもチャンスがあり、挑戦ができる会社です。
 蕎麦打ち職人は7、8人いるのですが、1人を除いて全員移住者です。全国的に移住者に対して偏見の目がある会社もあると聞いていますが、積極的に移住者を採用し、理解を示してくれます。私たち移住者も、地域への理解を深めることができます。アルプスを通して地元の方々と接する機会を与えてくれますので、仕事によって新たな出会いや発見ができる会社でもあります。
 またアルプスは、高齢者や障害を持った方へのサポートもしています。私自身、今まで出会えなかった人たちと触れ合い、その方がなにを望んでいるのか?なにを求めているのか?と気づき、人はだれもが一緒だと、共生していく大切さをこの年齢になって初めて教えてもらったような気がします。このように多様なニーズに応え、いくつになっても成長できるアルプスです。

05. これからチャレンジしてみたいことは?

 単刀直入に「山梨で1番ヴァイオリンの上手い蕎麦打ち職人」になることです!
学生時代、コントラバスをやっていたことやヴァイオリンを買ってもらった記憶があります。ヴァイオリンは、手つかずのままになっていたため、いつか習得したいと考えていました。やっと長年の夢が叶い、こちらに移住してから習い始めたのですが、すぐに結果を求めてしまう性格上、ヴァイオリンの先生に「すぐ1番になるには?」と尋ねてみました。すると先生は、「ヴァイオリンが上手い蕎麦打ち職人は、たぶん1人か2人しかいないのでは?」と答えたため、「ヴァイオリンが上手い蕎麦打ち職人」を目指そうと思ったのです。
 年に2回の発表会に参加できるまでに上達はしましたので、三分一湧水館に隣接する資料館の3階にあるホールで、コンサートすることが当面の目標です。「ヴァイオリンが上手い蕎麦打ち職人」が、口コミでどんどん広がっていけば楽しいですね。あり得ないと思いつつ、店でお客様が蕎麦を召し上がっている隣で、ヴァイオリンを弾く…なんて妄想も抱いています。私のヴァイオリンはさておき、一人ひとりの趣味を活かした店づくりをしていくのもいいなぁと感じています。

06. 就職を考えているあなたへ

 仕事とはなにか?自分はなにを仕事にして生きていきたいのか?と、思い悩んで葛藤したり、周りに言われるがまま安易に就職を決めてしまったりしている方もいるのではないでしょうか?アルプスは飲食業態の中で、さまざまな店舗を展開していますので、そのすべてを経験できるチャンスがあります。悩んでいる方やどこでもいいから就職できれば…と考えている方にとっては、解決の糸口が見つけられるかもしれません。自分の可能性に気づき、将来の方向性が見つけられるかもしれません。それを実感できる魅力的な会社です。
 また、私のような年齢の中途採用の人もたくさん働いています。世代を超えて、多くの人たちと同じ仕事をすることは、貴重な体験になると思います。お互いの知恵と工夫を出し合い、高め合うことで仕事も人生も楽しくなるはずです。
 アルプスは、あなたの知らない世界が広がります。あなたの夢をアルプスという世界で見てください。